最判昭57.3.30
最高裁判例 過失論
最高裁昭和57年3月30日判決―医療水準
医師の注意義務の基準となる「医療水準」を示した基本判例
- 裁判所
- 最高裁判所第三小法廷
- 判決日
- 昭和57年3月30日
- 事件番号
- 昭54(オ)1386号
- 結論
- 上告棄却
過失を判断するときは、後から得られた医学知識ではなく、診療当時の臨床医学の実践における医療水準を基準にすることを明示しました。
01
事案の概要
未熟児網膜症を発症して視力障害を負った患者について、ステロイドホルモン剤の投与や、当時先駆的に行われ始めていた光凝固治療を受けられる医療機関への転医等が問題となった事案です。最高裁は、当時は光凝固法が先駆的研究者の間で実験的に試みられ始めた段階で、一般の総合病院や大学病院でも一般的に実施できる状況ではなかったことなどを前提に、医療機関側の責任を否定しました。
02
判決主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
03
判旨の重要部分 原文
判決書から重要部分を要約せず原文のまま掲載しています。改行はWeb表示に合わせています。
思うに、人の生命及び健康を管理すべき業務に従事する者は、その業務の性質に照らし、危険防止のための実験上必要とされる最善の注意義務を要求されるが(最高裁昭和三一年(オ)第一〇六五号同三六年二月一六日第一小法廷判決・民集一五巻二号二四四頁参照)、右注意義務の基準となるべきものは、診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準であるから、前記事実関係のもとにおいて、所論の説明指導義務及び転医指示義務及び転医指示義務はないものとしたうえ、被上告人の不法行為責任及び債務不履行責任は認められないとした原審の判断は正当であって、その過程に所論の違法はない。論旨は、いずれも採用することができない。
04
実務上のポイント
- 医療過誤の過失判断の出発点となる最高裁判例です。
- 過失は、最終的な診断や結果から逆算するのではなく、診療当時の医療水準を基準に判断します。
- 「医療水準」の具体化については、最高裁平成7年6月9日判決、医療慣行との関係については最高裁平成8年1月23日判決が重要です。